不毛地帯…その8。

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松重豊さん演じる『小出』の話を続ける…。

戦国武将みたいな人々(まあ『傑物達』とでも思ってくれい…)が群れ集う『不毛地帯』の物語の中で彼は珍しい位『普通の人物』…まあ戦国時代で言えば『雑兵』というところか…。

防衛庁(この物語の中ではまだ『防衛庁』…そういう時代の話…)の役人であった彼は近畿商事に饗応を受けその対価として情報を流し、結果防衛庁にいられなくなり近畿商事に入る事になる。

そして今度は彼が防衛庁の役人を饗応して情報を得る役回りになる…。

「防衛庁出身で防衛庁周りの仕事をするなら、たとえ『元後輩』『元部下』であってもヘコヘコ頭を下げる覚悟がなくては務まらない」

と言われた彼はまさにその通りに努めて防衛庁の役人の中に食い込んでいくのだが、そんな折に今朝の投稿に書いた流れで『壱岐の手足として働く存在』になる。

とはいっても所詮は『チョイ役』…。

『FX戦の影の参謀』となった壱岐自身が目立ってはならない関係上、『壱岐がしたら目に付く仕事』や『防衛庁役人への必要な聞き取り&情報収集』、果ては『ややダーティーな金周りの仕事』といった作業を小出がこなす…でも…大事な場面になるといつもきまって

「ありがとう」

「君は…今日はもういいから…」

と言われて目の前で扉を閉められたり帰らされたり…まさに『ザ・雑兵』…。

原作の小出は自分のそんな扱いに不満を持ち、でもそれを口にする勇気はなく、上目遣いで壱岐を見て不平を燻らせるような人物だった…確か(笑)

『確か』というのは原作の2巻をまだ読み返せずにいるからなのだが(恥)昔読んだ時の微かな記憶では小出は確かそんな人物だった。

しかし…『ドラマの小出』はちょっと違ったような…。

ドラマの小出は『わりと自然に笑う』のよ!

壱岐の指示を受けて仕事をこなした後、彼にとってはそれなりにスリリングな作業を終えてガクブルしながら会社に戻った後、そして前述の『君はもういいから…』と言われて目の前で扉を閉められた後、小出はまるで子供のような無邪気な笑顔を浮かべるのだ…。

無論それは『何の不満もない』『与えられた仕事をこなすだけで満足していますよ』という事ではない…。

ドラマの小出にだって『不満』はある…『不安』もある…。

でも…それを言って何になろう…。

防衛庁出身で防衛庁を半ばクビに近い形で追われた自分に後は無い…近畿商事に与えられた仕事をこなして『ものの役に立つ人物』という評価を得なくてはいずれは放逐されてしまう…。

だから壱岐の言う事なら何でもやったのだ…その結果をあまり評価されなくても目の前で扉を閉められても『子供のような無邪気な笑顔』で応えたのだ…。

『こんな事は何でもないんですよ』

『こんな事で傷つくような脆弱な自我なぞ持ってはおりません』

『近畿商事あってのわたくしです』

といった気持ちの現れが『子供のような無邪気な笑顔』…『怪物、傑物揃いの不毛地帯の面々』の中でそれは何という『普通さ』であったか…。

でも…そんな小出の『仮面』が遂に剥がれる日が訪れる…。

壱岐の指示で小出が収集した『FXの価格&仕様表』が機密漏えい罪に問われ司直の手が近畿商事に迫る…。

そうなればいの一番に捜査を受ける事になる小出は慌て焦り狼狽えて壱岐に泣訴する…。

「自分を今すぐ海外出張に出して下さい!」

「このままここにいたら私は…」

と…。

しかし壱岐はそれに取り合わず『FX資料収集の場となった六本木のマンションの片付け』を命ずる…『まずは証拠を消す』という冷静な判断…。

ここで初めて小出は真顔になり

「羨ましいですよ…」

「参謀時代も商社マンになっても『作戦を立てるだけで傷ひとつ負わない貴方』が羨ましくて仕方がない…」

と呟き壱岐をキッと見据える…。

でも…その直後またすぐ『子供のような無邪気な笑顔』を浮かべるのよ!

原作では確か『憮然としてそのまま壱岐の元を去る』というような場面だったし、そうでなくても『笑うような場面ではなかった』から凄く違和感があったんだけど、後々つらつら思ったのが

「ああ…これが『ドラマの小出』なんだな…」

という事…。

「自分の身の不安から初めて壱岐に憤りの色を見せておきながら、その直後に笑ってみせるのが『このドラマの小出の解釈』なんだな…」

と思った…。

違和感はある…違和感はあったのだが…












































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「羨ましいですよ…」

「参謀時代も商社マンになっても『作戦を立てるだけで傷ひとつ負わない貴方』が羨ましくて仕方ない…」

と初めて憤りの色を見せた小出が…















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こうして…














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笑ってしまう事に…













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共感した…。

『この笑いの解釈』は色々あると思う。

『笑うしかなかった』とも言えるし『皮肉な笑い』とも言えるし『ヤケクソの笑い』とも言えるであろう。

ただ…この場面での小出の笑いがあまりに『無邪気な子供のような笑い』であった為、漏れの中ではその解釈に迷った…迷った分だけ印象に残った…。

それは『小出を演じた松重豊さんの演技力によるもの』であると漏れは思っている…。

松重さんはこうした場面でありがちな『憤りを交えた皮肉な笑い』『自暴自棄なふてぶてしい笑い』といった月並みな表現をせず『小出がいつも浮かべていた子供のような無邪気な笑い』を浮かべてみせたのだ…それこそが『このドラマに於ける小出の精一杯の抵抗』だったのだ…。

怪物傑物揃いのこのドラマの中に『こんな小市民』がいた事が強く記憶に残った…。

「時代を動かしていくのは『怪物』『傑物』といった人々…『普通の人』『小市民』なんて存在はただ流されて翻弄されているだけ…」

「でも…そんな小出のような『普通の人』『小市民』だってやはり『生きている』んだよなぁ…」

なんて事を感じた…。

それを感じさせてくれたのは繰り返しになるけど『松重豊さんの演技力』があったればこそ…彼がこの役をやらなければ『この場面』はここまで記憶に残らなかったであろう…。

「さすがは松重さん…」

と感嘆した…。

あれだけ飯を旨そうに食えるだけあって…松重さんの演技力はやはりつくづく大したものでありますなぁ〜♪

それ『ゴロー』だろうが!!!(締め呆れ)














続く…。
by shousei0000 | 2017-05-16 21:20 | ペリーニ アダージオ | Trackback | Comments(0)
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