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秩父三十四ヶ所! 第一夜 その5

絶対に負けられない闘いが、ここにはある!




















絶対に負けられない・・・アクアの為に負けられない!


前回記した様に、アクアにはまだ押された経験がない。いずれどこかで初めての『押し』を経験するにしても、それは名だたる難所と雄々し闘い、それで刀折れ矢尽き散り果てた上でのものでありたい・・・。こんな無名な巡礼路が相手では役不足なのだ!





絶対に負けられない・・・オルテガの為にも負けられない!


唐突に『オルテガ』という名前が出てきて読者諸氏は驚かれたと思うが『オルテガ』とはアクアのフレームを作ったスペイン人である。大酒飲みで気が荒く一見無愛想な男だが、実は路地裏の捨て猫を可愛がる様な優しさも持ち合わせている。しかしそうした裏の顔はめったに見せず、従って既に34歳にもなるのに未だに結婚できていない・・・。

こうした無骨なイメージの彼であるが、フレーム造りに於いては意外な程の繊細さと華麗さを発揮し、仲間達から一目も二目も置かれている。彼は自分の娘を愛しむ様にフレームを造り、それを製品として送り出す時には花嫁の父の様に、そっと人知れず涙を流すという・・・。
そんな彼が命を賭けて造ってくれたアクアを、こんな所で汚辱に塗れさせてはならない!
(量産品の、しかも外国製のアクアなのに、よくビルダーさんの名前とか境遇とか分かったね?←自分で考えてみただけですが・・・←妄想かよ!





絶対に負けられない・・・観世音菩薩様の為にも負けられない!


観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)とは、秩父三十四ヶ所を束ねる御本尊(主たる仏)である。小生は一番四萬部寺の問題の住職に聞いて、初めて観世音菩薩が秩父の本尊である事を知った・・・(いやしくも巡礼者なら、その位下調べしとけ!)
という事は即ち、今まさに闘っている山の上にある二番真福寺にも、観世音菩薩様がおわすのである!この坂路は彼女に至る為の試練なのである!!(『観世音は女性ではない』とする説もあるが、拙ブログ中では観世音を女性として捉えていきます。あと『観世音』と書いたり『観音』と書いたりもするけど気にしないでね。あ、『様』を付けたり付けなかったりもするからね←説明くどいッ!)
御本尊様のくだされた試練とあれば、これを乗り越えるに如くは無し・・・。
だからやっぱり、降りて歩く事などできやしない!!!


かくて決意は定まった!最早迷いも消え去った!!今や小生の胸にあるのは
絶対に負けられない!必ずやり遂げる!!
の一文ただそれのみ・・・。そんな想いに支えられながら、遮二無二に必死にペダルを漕ぐ・・・。
時速は先程から4Km台に留まっているが、それが一体何であろう?
ゆっくりでいいんだ・・・着実に前進しているのなら!
速くても怠惰な兎は負けた・・・そして遅くても着実な亀は勝った!!
そう・・・華麗さも派手さもこれまでに人生に抱合しなかった小生にとって、この時速4Kmで地道に坂を登る姿は、まさに人生の縮図であり自己表現に他ならない・・・。


小生よ!お前の生き様、見せてやれ!!


こうして不退転の決意で更にペダルを漕ぎ続けた小生であったが、その最中、ふとちょっとした事に思い当たった。時速4Kmとは、自転車が自転車として走り続けられるギリギリの速度である。あとちょっとでも速度が落ちれば失速して直立を維持出来なくなるだろうし、小石か何かを踏んでバランスを崩せば、これもまた直立を損なう結果になるであろう。そしてそうした事態が発生した時、ビンディングペダルに足を固定されている小生は、自転車諸共横転する事になるであろう・・・。
それはちょっと危ないのではあるまいか?


ここで突然凄~く陳腐な言葉を引用させてもらうが、小生は子供の頃、学校の先生にこう言われた事がある。曰く

「家に帰るまでが遠足だよ」

と・・・。
楽しかった遠足を終えた子供達は、往々にして注意力を散漫にしがちである。
そんな状態にある子供達は、遠足解散から自宅までの帰路の間に、どんな危険に会うか知れない・・・。そこで先生は子供達のたがを締める為、必ず上記の様な台詞を口にしたのであろう・・・。
そう考えれば至言である・・・。
安全は全てに優先する!


そして今の小生の置かれた状況を俯瞰すると、明らかに危険な状態である。何しろいつ転倒してもおかしくない状況なのだ!もし仮に転倒してしまったとしたら、まず小生が怪我を負う・・・。
そりゃ~時速4Kmという低速だからちょっと擦りむく位で済むとは思うが
そこから雑菌とかが入ってしまったとしたら、悪くすれば破傷風とかになる可能性だってなくはない!


そして同じく転倒してしまった場合、アクアが損傷する事も覚悟しなくてはならない。
それはアクア自体も嫌であろうしオルテガ(仮名)にとってだって不本意であろう。
また肝心の観世音菩薩様にあらせられても、その敬虔な使徒(小生の事←いつから仏教徒になったんだ~ッ!)が怪我をしたり、その愛車が損傷したりするのを望む筈がない。
つまりここで小生が無理をしてペダルを漕ぎ続ける事は、結果として多くの人に哀しみや痛みを感じさせる可能性が高い・・・。
そういう事は(無理にペダルを漕ぐ事は)今すぐやめるべきではあるまいか?



それからもうひとつ思い当たったのだが、今小生が必死になってペダルを漕いでいる坂路は、先にも触れた通り『江戸古道』と呼ばれる道である。江戸時代に整備された道だから『江戸古道』と呼ぶ・・・当然の命名である。そしてこの場合の『江戸』とは江戸時代初期頃を指すらしいのだが、日本に初めて自転車が入って来たのは、確か江戸時代最末期だったか明治初期だったかと聞いた覚えがある。つまりこの道が成立した時代には自転車という物はまだ影も形もなく
従ってこの道は自転車で走る事を想定しては作られなかった!


上に明記した通り、この道は本来自転車で走る様には作られていない。
それではどう走る、というか通行する様に作られたのかというと
それは徒歩で通行する様、作られたのである!
そうした道を自転車で走る事には、ちょっと無理があるのではあるまいか・・・?


といいますかね、ちょっと勿体無いと思うんですよ。折角の『江戸古道』を、木々の間から優しい木漏れ日が差し、梢を渡る風が爽やかであり、今日び中々味わえない静寂が満ちるこの『江戸古道』の雰囲気って奴を、必死になってペダルを漕いでる状況の中で、果たして満喫する事が出来るでしょうか?いや、決して出来やしないでしょう・・・。そりゃ~このままペダルを漕いで登り詰めればサイクリストとしては本懐かもしれませんが
巡礼者として、それは果たして正解なのでしょうか・・・?


皆さん、観世音菩薩様のお顔って見た事あります?とっても優しい柔和なお顔をしているんですよ。それに対して、今の小生の顔はどうです?
「絶対に負けられない!」と勢い込み頑張っているといえば聞こえは良いですが、その実、我欲を剥き出しにして顔をクシャクシャにしているというのが実情です・・・。そんな悪鬼羅刹の様な顔で御前(みまえ)に行ったとして、果たして観世音菩薩様は喜んでくれるのでしょうか?


「小生よ・・・貴方は間違っています・・・」


「巡礼とは競ったり争ったりするものではなく、慈しみ愛し合うものなのですよ・・・」


とおっしゃり、その本来柔和である筈のご尊顔に、哀しみの色を湛えられるのではないでしょうか?ご本尊を哀しませてしまうなんて、それで巡礼者としていいんでしょうか?
敬虔なる御仏の信徒として、もっと違う採るべき道があるのではないでしょうか・・・。


かくして小生の採るべき道は決まりました。
小生は静かにクリートを外しアクアから降りると、徒歩でその坂を登り始めたのです。


安全を第一に考えて・・・。


『江戸古道』の風情を味わうべく・・・。


そして何より、観世音菩薩様の御心に沿う為に・・・。




































決して「あ~もうきついから降りちまおう!」と根をあげたとか「観世音菩薩にかけとけば、読者も納得してくれるだろう♪」とか、そういう浅はかな考えで降りたんじゃないからな!あと『江戸古道』は本来自転車で走る道じゃないんだから、この『押し』は『押し』にはカウントされないからな!ノーコンテストだからな!!その辺の理屈、分かるよな?分かってるよな?分かれ~ッ!!!
(はいはい・・・よ~く分かりました・・・分かったから皆まで言うな・・・みっともない・・・)




















続く(というオチでした←笑←笑えません・・・超~長かったし・・・)
by shousei0000 | 2008-08-14 01:21 | 秩父三十四ヶ所


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